当院では、難治性過活動膀胱、神経因性膀胱に対するボツリヌス毒素膀胱壁内注射療法を行っています。

難治性過活動膀胱・神経因性膀胱 | 大分泌尿器科病院 | 正常な膀胱 過活動膀胱
難治性過活動膀胱・神経因性膀胱 | 大分泌尿器科病院 | 過活動膀胱に関連する因子

過活動膀胱では、切迫性尿失禁や尿意切迫感,頻尿などの症状を認めます。過活動膀胱による尿失禁、頻尿の治療薬として、抗コリン薬、β3刺激薬などが使用されていますが、効果が不十分、口渇、便秘などの副作用のため使用を継続できない場合もあります。尿失禁、頻尿の新しい治療法として、A型ボツリヌス毒素の膀胱壁内注入療法が2000年に初めて海外で報告され、その高い有効性と安全性から欧米を中心に普及しております。A型ボツリヌス毒素は筋弛緩作用を示し、泌尿器科領域以外では、眼臉痙攣、顔面痙攣、痙性斜頚などで治療薬として用いられています。

関連する症状

治療について

ボツリヌス療法

当院では抗コリン薬や他の保存的な治療法で効果が得られない難治性過活動膀胱に対するボツリヌス毒素膀胱壁内注射療法を考慮いたします。この治療法は膀胱鏡というカメラを用い、膀胱の筋肉にボツリヌス毒素を注射する方法です。麻酔を行った後に膀胱の筋肉に細い針でボツリヌス毒素を過活動膀胱では20、神経因性膀胱では30箇所に分けて注射します。手術時間は5~20分程度です。一回の投与で治療効果は約6~9ヶ月持続すると考えられます。

ボツリヌス毒素膀胱壁内注射療法は治療にあたって使用資格が必要です。

【参考資料】グラクソ・スミスクライン社プレスリリース

期待できる効果

  • 突然起こる強い尿意が減る
  • 尿漏れの回数が減る
  • 日中の排尿回数が減る
  • 夜間の排尿回数が減る

仙⾻神経刺激療法(SNM:Sacral Neuromodulation)

当院では、難治性の過活動膀胱に対する新しい治療として「仙⾻神経刺激療法」を開始しました。過活動膀胱の治療は、⽣活指導に加えて抗コリン薬・β3作動薬・漢⽅薬などの内服薬を⽤いて治療することが多いですが、なかには、①治療効果に乏しい、②⼝内乾燥や便秘などの副作⽤で内服薬の継続が難しい、といった患者さんもおられます。

⼀般的に⽣活指導と内服薬による治療を3ヶ⽉程度続けても症状改善が得られない場合に「難治性過活動膀胱」と診断します。このような場合に有効な治療法のひとつとして「仙⾻神経刺激療法」があります。欧⽶では20年程から実施されており、既に広く普及しています。本邦では2017年9⽉に保険収載されました。

国内外の臨床試験では多くの患者様に有効な治療法であることが示されています。 過活動膀胱の治療でお困りの⽅、「仙⾻神経刺激療法」に興味のある⽅は、お気軽にお問い合わせください。

過活動膀胱の症状

尿意切迫感が強く、トイレまで我慢ができず尿をもらしてしまう(切迫性尿失禁)。また、日中や夜間の排尿回数が多くなる(頻尿、夜間頻尿)

仙骨神経刺激療法(SNM)とは

排泄に関係する神経(仙骨神経)に持続的に電気刺激を与えることで過活動膀胱の症状改善を図る治療法です。手術は2回に分けて行います。

1回目の手術で電気刺激用の刺激電極(リード)を臀部から挿入して一定期間(3-7日程度)電気刺激(体外式の刺激装置を使用)を行い、十分な治療効果が得られるか確認します。効果が認められない場合はリードを抜去します(以前の状態に戻ります)。

効果が認められた場合は、2回目の手術で体内植込み型の刺激装置を臀部に植え込んで治療を継続します。治療効果は個人差がありますが米国で行われた臨床試験では、治療開始3か月目の時点で1日の尿失禁回数が約80%の患者さんで手術前の半分以下に減少しました。また、40%の患者さんで尿失禁が消失しました。

治療法について

1.リード(刺激電極)の挿入

まず治療効果を確認するために、リードだけをおしりの仙骨にゆっくり挿入します。 大きな切開は行いませんが、手術室で麻酔をかけて行います。

2.試験刺激

挿入したリードと対外式の刺激装置を接続して、1~2週間試験的に刺激を行い、治療効果を判定します。もし、効果が認められない場合は、刺激装置の植込みは行わずリードを抜去します。

3.刺激装置の植込み

試験刺激により治療の効果が認められた場合は、すでに挿入されているリードを刺激装置に接続した後、おしりのふくらみ上部に植込みます。

仙骨神経刺激療法(SNM)の特徴

  • 刺激装置を植込む前に、試験刺激で効果を確かめられます。
  • 効果が認められない場合にはリードを抜いて、以前の状態に戻すことができます。
  • 刺激装置の植込み後は、刺激の調整をご自身でコントロールできます。
効果について
  • これまでに米国で行われた臨床試験では、治療開始3か月の時点で1日の尿失禁回数が約4割の患者さんで0回に約8割の患者さんで手術前の半分以下に減少しました。
  • また頻尿の患者さんでは、約7割の患者さんが8回未満の通常排尿回数または手術前の半分以下に減少し、尿失禁、頻尿共に、1年後も効果が持続しました。
合併症について
  • 植込み部位の違和感や疼痛を生じる場合があります。
  • 体内に異物を植え込むため、感染を起こす可能性があります。
  • アレルギー反応を起こす可能性があります。